日本人男性の3人に2人(65.5%)、日本人女性の2人に1人(51.2%)が一生のうちにがんにかかり、年間で約100 万人が新たにがんと診断されています(国立研究開発法人国立がん研究センター2019年データ)。そして、2022年にがんで亡くなった人は、38.6万人(男性22.3万人、女性16.3万人)にも上り、がんによる死亡率は日本人男性で4人に1人(25.1%)、日本人女性で6人に1人(17.5%)です。
今回、『九州しあわせ共創Hub(QHub)』において、昨今のがん治療で注目を集める『リンパ浮腫』をテーマとした医療セミナーが、NPO法人ウィッグリング・ジャパン(福岡市中央区、上田あい子代表理事)と、久留米大学(福岡県久留米市、内村直尚学長)によって共同で開催されましたので、セミナーの様子を報告させていただきます。
病気になっても、不安の少ない社会づくりに取り組む
がん治療での副作用による脱毛時においては、医療用かつら(ウィッグ)が使われているものの、高額になりがちな面もありました。ウィッグリング・ジャパンにおかれては、治療を終えた患者らから使用済みウィッグを引き取り、これからがんと闘病する女性らへレンタルしていくリユースサービスを提供されておられます。
また、ウィッグリング・ジャパンは、がんの治療経験を持つスタッフが、患者対応していくピアサポートを取り入れており、がんと闘う人たちに寄り添いながら、ウィッグを通じて勇気や希望を届けていく活動を続けるNPO法人です。
がんと向きあうあなたに届けたい情報がある━━。ウィッグリング・ジャパンは2023年8月、がん治療情報サイト『チアーズビューティー』構築でクラウドファンディングを採用、目標を上回る賛同を得て立ち上げました。
そして、ウィッグリング・ジャパンは、2011年より久留米大学先端癌治療研究センターと医療セミナーを共同開催しており、2024年4月末時点で134回の開催回数を数えます。
ウィッグリング・ジャパンのリユースウィッグや各種提供商品
リンパ浮腫ケアの専門家である今村さあら代表理事が登壇
2024年4月26日、QHubを会場に開いた第134回医療セミナーのテーマは、がん治療で関心が高いにも関わらず、これまで取り上げられることが少なかった『リンパ浮腫』でした。
今回の講師として、リンパ浮腫ケア指導技能者であり、理学療法士の資格も持ちながら、リンパ浮腫専門サロンを運営する一般社団法人バラカメディカルの今村さあら代表理事が登壇されて、謎の多いリンパ浮腫のベールを解き明かしました。
リンパ浮腫とは、がん治療として実施したリンパ節の切除や放射線治療、一部の薬物療法でリンパ液の流れが悪くなり、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚下でリンパ液がたまってむくんだ状態を指します。リンパ浮腫を発症すると、治りづらい上に進行しやすいため、むくんだ箇所が悪化して関節が曲げづらくなるなど、実生活上において悪影響を与えることもあります。
「NHK番組『あしたが変わるトリセツショー』で2024年1月18日に放映され、『リンパ取扱説明書』が一番人気だった」ことを説明する今村代表は、「リンパ浮腫は生活習慣病と類似しており、まず自分の健康を知ることが大事」と、持論を力説されました。
講師を務められた今村さあら代表理事(右)とNPO法人ウィッグリング・ジャパン上田あい子代表理事(左)
今回の医療セミナーを開催したウィッグリング・ジャパンの上田あい子代表理事は、「いまは昔と違って、がん治療を乗り越えた後の人生を楽しむことが出来るようになりました。ただ、病気は突然やってくるものなので、前もって“がん情報”を備えることが重要だと考えます。そして治療後も自分らしく生活できるように社会の理解を深めて、がん情報を学ぶ場を作り、がんサバイバーが孤独にならないような情報発信と居場所作りを続けたいと思っています。」と語っておられます。
九州博報堂のパーパス「地域の情熱たちと、未来をつくる。」の下、九州しあわせ共創ラボは九州において社会課題の解決に向けて取り組んでいる方々や組織・団体とのアイデアあふれる共創アクションを通じて〝九州のしあわせ〟を実現していきます。みなさまとともに共創ハブQHubを拠点に「共創」をひとつづつカタチしにしていければと考えていますので、どうぞQHubをご活用くださいませ。