Qラボ 九州しあわせ共創ラボ

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正解のない〝問い〟を次世代と共に考え抜く「LAP」の取り組み

 世の中の動きや出来事が高度化・複雑化していく中、〝学び〟自体も大きく変化しています。リベラルアーツをベースに複眼的かつ総合的な視点で社会のメカニズムや力学を把握していこうとするユニークなリベラルアーツ講座「LAP(Liberal Arts Program for Next Leaders)」。次世代を担うリーダーを育成していくことを目的とする「LAP」は年目となる今年度からQHubに会場を移して毎月開催していただけることとなりました。

社会のメカニズムや力学について学生らが学び知る

当日は約20名の学生が参加。鋭い眼差しで古賀さんの話を吸収する


2024
年7月7日の七夕、日曜日の昼下がりに地元・福岡の大学に通う学生らが三々五々、QHubに集まって来ました。大学生をはじめ次世代を担うリーダーらを対象にしたリベラルアーツのプログラム講座である「LAP」は、世の中がどのようなメカニズムや力学で動いているのかを知り、自らの価値観や人生観を育んで社会に向き合っていく学びの場です。「LAP」に参加者は、事前に課題図書を読み込み、チーム単位で事前課題の『問い』についてのオンライン対話という予習を経てリアルなセッションに臨みます。

 

第1回の講師として、カナダ・バンクーバー在住の松田美幸さんが登壇

 

 今年度の第回目となった単元のテーマは『社会構成主義』。単元の講師として、カナダ・バンクーバー在住の変革リーダーシップコーチでもある、INVITATION代表の松田美幸さんがオンラインで登壇されました。

 

異文化理解の次元モデルでアプローチを図る

 

 学術的成果や国際機関の公式データを基に討論した目まぐるしく変転して予測困難な現代社会を読み解く手法の一つとして、松田さんは“VUCA(ブーカ)”について解説されました。そして、Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)という4単語の頭文字であるVUCAの視点で社会を複眼的かつ総合的にみていくことの大切さを参加者は学びました。

 一方、〝文化と経営〟の世界的権威であるホフステード博士が、IBM従業員12万人の意識調査を基に提唱した『異文化理解の次元モデル』も紹介されました。<社会と個人の関係性><権力/不平等への対応><未知への対応><動機づけ要因><過去現在未来への対応><人生の楽しみ方>の次元で日本をはじめ各国を国際比較してみました。さらに男女間における所得格差について、ジニ係数の国際比較のデータについて、参加者らは2~4人の各グループ内で語り合いました。その後、チームに分かれて取り組んだ事前課題の『問い』に対する見解を発表し、他チーム参加者との質疑応答や意見交換も行っています。充実した時間を過ごした参加者らは、当日の復習となるリフレクションにおいても学びや気づきを共有していきました。

クリティカルかつロジカルに語り合って答えを見出していく

 

 4チームに分かれてのディスカッション風景。お互いの考えを共有

 

 最後に「LAP」主催者の古賀さんに話を聞きました。「たしかに大学では、いろいろな知識を学べるものの、<世の中はどうなっているのか><どんなメカニズムや力学で社会が動いているのか>を知る機会は乏しいというのが実情です。社会や物事を複眼的な視点で哲学的かつ総合的に考えていく上においてリベラルアーツが大事だと考えたことが、『LAP』を立ち上げる動機でした」

 次世代リーダー向けのリベラルアーツ講座である「LAP」を立ち上げたプロデューサーであり、株式会社RoleDesig 代表取締役でもある古賀正博さんにとって、かつて勤務していた大手家電メーカーでの実体験が原点になりました。その後、大学生らのインターンシップを推進していくポジションに就いた古賀さんは、数多くの若者らと接する中、リベラルアーツをベースにボランティア精神で作り上げた〝みんなで学べる場〟の必要性を感じ、「LAP」を立ち上げました。

 来年、発足10周年を迎える「LAP」に学んだ若者らは現在、社会人としてコンサルティングファームでの経営コンサルタントや教師、医師、NPO職員など各界で活躍しています。卒業生の中には、移住先の地域でLAPの立ち上げに挑んだり、『日本リベラルアーツ協会』という全国組織を設立したりした者たちもいます。

「Lap」のプロデューサーを務める古賀正博さんによるインプットセッション

 

 「今は、正解のない時代であり、先が見えない社会情勢です。だからこそ、社会の動きや物事について、<そもそも~>論に立ち返って本質に迫っていく姿勢が重要になっていきます。そして、従来のように明確な方針でみんなを引っ張っていくリーダーシップではなく、クリティカルかつロジカルにみんなで答えを見出していく対話重視のリーダーシップが今後重要です」と古賀さんは語りました。リベラルアーツを〝武器〟にしていきながら、若者らと一緒になって、〝正解のない問い〟に挑み続けていかれる古賀さんの共創力に大いなる刺激を受けました。

 

 九州博報堂のパーパス「地域の情熱たちと、未来をつくる。」の下、九州しあわせ共創ラボは九州において社会課題の解決に向けて取り組んでいる方々や組織・団体とのアイデアあふれる共創アクションを通じて〝九州のしあわせ〟を実現していきます。みなさまとともに共創ハブQHubを拠点に「共創」をひとつずつカタチしにしていければと考えていますので、どうぞQHubをご活用くださいませ。

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Qラボ 研究員
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