12世紀末に茶祖・栄西禅師が、宋からお茶の文化を博多の地にもたらし、日本最初の禅道場である聖福寺を建立しました。今日、福岡県は日本におけるお茶の主要生産地の一つに数えられるなど、お茶とも縁深い土地柄です。
オフィスの一角に設けられたお茶会のスペースで社員らの笑顔が花開く。九州博報堂本社内のQHubでは7月11日、日本茶業体制強化推進協議会の主催、一般社団法人お茶結びプロジェクトの企画・運営によって『オフィスDEお茶会』が開催されました。当日、九州博報堂の社員らは、出入り自由で日本茶を楽しめる貴重な機会となりました。
「オフィス de お茶会」いよいよ開催です。
約800年前に人々を熱狂させた『茶歌舞伎』を再現
『茶歌舞伎』は5人の参加者がお茶の種類を飲み当てます。「全問正解できるかな?」楽しいひとときです。
『茶歌舞伎』に使用された茶葉お茶の香り、味、色味を感じながら飲み当てにチャレンジします。
鎌倉末期に宋からもたらされて、南北朝期から室町中期に武家や公家、僧侶の間で大流行したという『茶歌舞伎』も催されました。別名『闘茶』とも呼ばれて、名を伏せていれたお茶の種類を飲み当てる遊びは、大いに盛り上がりました。
『出前茶寮』はお茶とお菓子のペアリングを体験
一方、『出前茶寮』では、九州茶と軽食とのペアリングを体験でき、好評でした。当日のお品書きは八女煎茶、高千穂烏龍茶、知覧紅茶という3種のお茶に加えて、麹由来のアイスクリームや茶葉を食材に用いたチョコレート、おかき詰め合わせで楽しみました。
訪れた社員らからは、「日本茶に興味が沸き、すっかり好きになった」「新鮮な発見や驚きがあった」などの声が寄せられています。
一般社団法人お茶結びプロジェクトの理事長である徳永睦子先生による煎茶手前の席もありました。さらに気軽にテイクアウトできる『ふるまい茶』に選ばれたのは八女の玉露ほうじ茶でした。仕事の合間に足を運んだ社員らが、リフレッシュして生き生きとした表情で職場へ戻って行く姿が見られるという1日でした。
お茶の二大潮流は茶道(侘び茶)と煎茶(文人茶)
一般社団法人お茶結びプロジェクト理事長を務める徳永睦子先生による煎茶のお手前
今回の『オフィスDEお茶会』は、日本茶業体制強化推進協議会が主催し、一般社団法人お茶結びプロジェクトが、企画・運営を担当しました。お茶結びプロジェクトの理事長であり、30年余りにわたってお茶の啓発や茶育に取り組む料理研究家でもあり、煎茶のお手前も披露された徳永先生は、今回の企画について、次のように解説されます。
「会社には、会議室や休息コーナーなどのスペースがあり、社員や従業員の方々が仕事の合間に立ち寄ることができるので長年、オフィスでお茶会という企画を温めてきました。今回、お越しいただいた方々が、みなさん体験されて笑顔になられる姿を見て、本当に嬉しく思います」
今回の『オフィスDEお茶会』において抹茶を立てての茶道ではなく、煎茶をはじめとする日常的なお茶を選んだ点については、「茶室を構えての茶道(侘び茶)は、権力が伴ってくる存在でした。一方、江戸中期に誕生した煎茶は文人らに愛され、『文人茶』と呼ばれるなど日本人の心根や心情に寄り添ったお茶といえるでしょう」。徳永先生は、お茶と日本人の関係性を踏まえながら、優しい口調で話されます。
茶祖・栄西とゆかりある福岡県は5大茶生産地の一角
茶祖である栄西禅師は1191年(建久2)、宋から茶の文化を持ち帰りました。そして、日本で初めてお茶の栽培を始めた場所は脊振山にある霊仙寺だったとされます。
農林水産省『生産農業所得統計』によると、2013年における日本全国の茶栽培面積は3万6,000ヘクタールでした。そして、荒茶生産量は7万5,200トンであり、770億円の産業規模です。日本の主要茶産地である静岡県、鹿児島県、三重県、京都府、福岡県の5府県における茶栽培面積は、実に全国の3/4を占めています。
若手社員も体験した煎茶席。主席の作法もしっかり学べて大満足です。
お茶の消費動向については、緑茶(リーフ茶)の消費量は減少傾向を示すものの、ペットボトルに代表される緑茶飲料の消費量は増加傾向にあります。総務省『家計調査』によると、1世帯あたりの緑茶・茶飲料に対する年間支出金額は近年1万1,000円前後で横ばいのまま推移しています。一方、海外向け輸出は最近10年間で2.5倍強となり、2023年の輸出量は7,579トン、輸出額は292億円となるなど人気が高まっています。
今回のイベントは、「お茶」をいただくことの価値を改めて実感する体験となりました。何より、オフィス内でみんなでお茶をいただくことが刺激やコミュニケーションを生み出したように感じました。私たちみんなが、「オフィス DE お茶会」の考え方を取り入れた働き方を模索すべきかもしれません。日本茶の普及という課題解決に楽しみながら取り組んでいきたいものです。徳永先生をはじめお茶結びプロジェクトのみなさま、素晴らしい体験を提供いただきありがとうございました!