地域環境リノベーション計画代表の松口龍さんが立ち上げたリベラルアーツ講座 『福岡まちなか文化講座シリーズ』の第1回「<生の音>×<医>で考える人づくりとまちづくり」が2024年6月26日、九州しあわせ共創Hub(QHub)で開催されました。今回は、QHubで開かれた、ライブ演奏付きのユニークなセミナーの模様を報告させていただきます。
古代ギリシャ生まれの教養学「リベラルアーツ」について語り合う
本講座を企画・主催した松口龍さんから趣旨の説明
「古代ギリシャで生まれた『リベラルアーツ(一般教養)』は、言語系3学(文法・論理・修辞)と数学系4学(算術・幾何・天文・音楽)の計7学で構成されており、生きていくためのベーシックスペックです。今日、大学においてリベラルアーツが軽視されがちであり、産業や職業は利益の最大化を求めて専門化・タテ割り化してしまいました。こうした中、掛け算的で横断的なリベラルアーツは、利益の適正化や企業の社会貢献活動を可能にしていきます。本講座では〝生の音に触れること〟を軸にして、さまざまなテーマについて毎回、ゲストをお招きして、みんなで考えていきたいと思います」
開講に先立ち、講座の企画・主催を手掛け、自らコーディネーターを務める、地域環境リノベーション計画代表の松口龍さんは、講座の趣旨と目的を説明しました。第1回講座のゲストは、日本医史学会理事であり、九州大学医学部同窓会常任理事、医学博士の佐藤裕さんと、福岡を拠点に活動する指揮者の木村厚太郎さんのお二人です。
先ずは佐藤さんに、人間の脳と音楽との関係性についてお話をうかがいます。佐藤さんは次のように説明しました。 「音楽を聞くことによって、人間の脳幹が刺激されて脳内でドーパミンやエンドルフィン、アドレナリン、セロトニンなどの快楽ホルモンが分泌されます。そして、人間は幸福感を高めていき、ストレスを軽減させるという効果もみられます。特にクラシック音楽の〝生の音〟を聞くと、高い効果が期待されるという実験結果も得られています。」
バイオリンの音色で感じる〝生の音〟を体感
木村厚太郎さんのバイオリンと佐喜康平さんの電子ピアノによるミニ演奏会
対談後、指揮者・バイオリニスト・ビオラ奏者の木村厚太郎さんによるバイオリンと佐喜康平さんの電子ピアノによるミニ演奏会では、情景が目に浮かぶ楽曲として定評のある『津軽海峡冬景色』が披露されました。そして、19世紀最大の外科医であり、ブラームスの親友だったテオドール・ビルロートが作曲した『死へのあこがれ』の旋律には、会場の出席者らが熱心に耳を傾ける姿も見られました。
演奏後、本講座において講座マスターを務める木村さんも加わった鼎談では、音楽や医学に止まらず、人づくりやまちづくりなどにも及ぶ幅広い討論が繰り広げられました。
3人のリベラルアーツに関する討論を聞き入る受講者
「音楽は、感情を豊かにすると共にリベラルアーツを広く深く理解する上でも有効な手段です。文化や歴史、哲学、社会などが組み込まれており、総合的に学ぶことができます。音楽の効能について説明した木村さんは、「日々の暮らしをより豊かなものにするリベラルアーツの一つである音楽を〝生の音〟として、さまざまな人たちへ届けていくためにも日本初・福岡発の『アウトリーチ(出張)特化型の楽団』を設立していきたいと考えています」と、自らの意気込みを語りました。
「古代から受け継がれてきたリベラルアーツがある一方、現代を生きる私たち自身が自ら必要とする科目で〝今様のリベラルアーツ〟を構築すべきではないか。」「所有する300人収容の音楽ホールの利活用を検討しており、音楽と他コンテンツの融合について取り組んでいきたい。」…。当日、来場した出席者からも質問や感想、意見などが活発に寄せられるなど、会場は盛り上がりをみせました。
日本人による初の『第九』演奏の地で楽聖へ合唱の贈り物
松口龍さんによるリベラルアーツ解説
日本の音楽史上において、QHubが立地する福岡市・天神1丁目は1924年1月26日、日本人によって初めてベートーベン『交響曲第9番 ニ短調 作品125』第4楽章が演奏されたという土地です。当日、セミナーのエンディングにおいて、登壇者や出席者・関係者らは、ベートーベンへの感謝の気持ちを込めてハッピーバースデーを合唱し、会場のボルテージはさらに高まりました。
『福岡まちなか文化講座シリーズ』は今後、「生の音に触れること」を軸に、さまざまな視点に基づくテーマでセミナーを開講していく予定。具体的には、<生の音>×<食>、<生の音>×<住>、<生の音>×<脳科学>・<ジェロントロジー>、<生の音>×<まちづくり>・<コミュニティ>、<生の音>×<子育て>、<生の音>×<教育>・<大学>などのテーマを想定しているとのことです。Qラボも注目していきたいと考えています。
九州博報堂のパーパス「地域の情熱たちと、未来をつくる。」の下、九州しあわせ共創ラボは九州において社会課題の解決に向けて取り組んでいる方々や組織・団体とのアイデアあふれる共創アクションを通じて〝九州のしあわせ〟を実現していきます。みなさまとともに共創ハブQHubを拠点に「共創」をひとつずつカタチしにしていければと考えていますので、どうぞQHubをご活用くださいませ。