2021年8月22日にオープンした西日本最大級のeスポーツ施設
「esports Challenger’s Park(チャレンジャーズパーク、略称:チャレパ)」。
施設を運営するQTnetにて、eスポーツ事業を担当している西田氏にお話を伺いました。
後編では、西田氏から見た福岡のeスポーツ事情と日本全体のeスポーツ事情、QTnet今後の展望について語ります。 (*9月時点のインタビューです。)
-西田さんから見た福岡・九州全体のeスポーツへの取り組み方はいかがですか?
福岡をはじめ九州全体は、eスポーツに対して非常にポジティブですね。
2019年2月には、福岡国際センターで格闘ゲームの世界大会「EVO JAPAN 2019」が開催されました。この大会は福岡に1万3000人を集めるほどのイベントで、海外からの来場者もあり大盛り上がりでした。
「EVO JAPAN」はこれまで関東で開催されてきたのですが、福岡開催においても成功したという事実は、この地域の秘めたポテンシャルの高さを表していると思います。
2021年3月には、九州全体で「ブロスタ」というタイトルの1位を決める大会「Q1スーパートーナメント」が行われました。こちらも大盛況でした。私も職場の仲間と実際に参加しまして、その盛り上がりを肌で感じてきました。
九州の各県にもeスポーツ協会などがありまして、非常に活発に活動されています。例えば大分県eスポーツ連合さまは、足湯とゲームを組み合わせるなど、自県の魅力を活かしたユニークな試みをしています。eスポーツに対する熱量で見れば、九州も首都圏にも遜色ないものを持っていると思います。
もちろん、施設や環境などはまだまだ足りてない部分もあるので、地方が持つ土地の広さなどの強みを活かして、今後もより盛り上げていきたいと考えています。
他にも、eスポーツに留まらず、様々な企業さんとコラボして、新しい事業を生み出していきたいですね。こうしてさまざまな団体、人々が団結してeスポーツを盛り上げていく気概も、福岡の強みの1つです。「チャレパ」でもさまざまな取り組みをして、福岡の代表的なスポットを目指していきたいと思っています。
-日本全体のeスポーツ市場はどのように見ていますか?
日本のeスポーツ市場は、成長が見込まれている市場であることは間違いありません。予測数値も既に出ていますが、個人的には「本当にそこに届くのかな?」というのが正直な感想です。
その理由は、目線がコア層に向きすぎているのではないかと思うからです。今のリアルスポーツは、子供たちが一生懸命取り組むようなサイクルが成立しています。一方で、eスポーツはまだその段階に至っていない。
そこで、コア層のサポートは継続しつつ、一般層への裾野を広げることが必要です。そのためにどのようなアプローチをするのか。それが今後のeスポーツ事業の肝になる部分と考えています。
リアルスポーツの形は参考にするべきですよね。福岡を例に見れば、ソフトバンクホークスがあり、PayPayドームがあり、プレイする人だけでなく観る人が多く居る状態。こういった環境作りをしていかなければ、日本のeスポーツ市場は描いている未来に届かないのではないかと思います。
「チャレパ」はプロeスポーツチーム「Sengoku Gaming」の本拠地ということで、ソフトバンクホークスとpaypayドームのような形を目指していきたいです。
我々はeスポーツ事業に参入こそしましたが、元々が通信事業を行っている企業なので、まだまだ知見が足りてないと感じています。そこで、子会社でもある株式会社戦国と協力し、「チャレパ」を盛り上げていきたい思っています。
-コロナ渦におけるeスポーツ市場の変動はどう見られますか?
場所を作るという面では、「チャレパ」もオフラインで人を集める賑わいというものを目指していたので、少なからず影響はありました。とはいえ、コロナ渦をご自宅で過ごす時間が増えて、eスポーツへの関心は増していると感じます。
昨今はオフライン開催であったイベントがオンラインになることは多いですが、視聴者数だけで見ればコロナ渦以前と比較して倍増しています。そういった面から、eスポーツ市場はコロナ渦でも成長している市場であると言えますね。
同時に、この流れはいつまでも続かないと思っています。このコロナ渦の環境が終わった後にどうするのか。今はそれをしっかり考えておく時間ではないかと思っています。今がチャンスであり、今後の動きを決める重要なタイミングでもあります。
-今のファンに興味を持ち続けてもらうにはどのような施策が必要なのでしょうか?
オンラインの盛況ぶりは、コロナ渦を過ぎても一定数は残ると考えています。
もちろん、そのタイミングで離脱してしまう人もいるでしょう。
その方々をどう捕まえるのか。我々はアフターコロナを睨んで、場所を利用した楽しみを提供して、実際にオフラインでゲームをする面白さを知ってもらう、そういった先を見据えた訴求が大切だと思います。
-通信事業とeスポーツは組み合わせることでどのような相乗効果がありますか?
我々はFTTH回線(各家庭まで直接光通信を行う回線)のサービスを提供しておりまして、現在は最大1Gの通信を行える通信サービスになっています。現在は、これを今後に最大10Gまで通信ができるサービス提供の準備を進めています。
自宅でゲームをプレイする場合は、どうしても自宅で回線品質が影響してきます。それを気にする方々に、ゲームに最適な高速回線を提供できる施策を検討中です。
また、我々はQTmobileというモバイル回線事業も行っています。昨今はゲーム向けスマホも増えていますので、モバイルの需要も伸ばしていけるのではないかと考えています。
-電力事業とeスポーツにも連携できる部分はあるのでしょうか?
8月22日の「チャレパ」グランドオープンには、九州電力の池辺社長にもお越しいただきました。そこで、eスポーツ業界は今後に期待できるので、QTnetだけでなく九電グループの総力を結集してeスポーツを盛り上げていきたい……というお話を頂きました。
直接、電力事業に繋がるものではありませんが、グループを挙げて「チャレパ」のアピール、eスポーツの普及に取り組んでいきます。
– 福岡のeスポーツ市場を牽引するにあたり、意気込みなどはありますか?
そうですね。むしろ、我々が引っ張っていくという意気込みを持っていなければ、この事業には取り組めないと思っています。
施設の名前にもある通り、この事業はこの先もチャレンジの連続になるはずです。我々としては、施設を利用してもらって終了……ではなく、常に施設をアップデートして、eスポーツや情報の中心となる施設にしていきたいと思っています。
「チャレパ」は現段階では100%の完成度とは言えません。あえて仕上がりの伸び代を残しています。その余白に、新しいものをどんどん取り入れていき、時代が過ぎたものは外していく。そんな最先端を走り続ける施設を目指しています。
-今後「チャレパ」で実施したい施策などはありますか?
意外性をアピールしていきたいですね。eスポーツはPCでゲームをするだけではない、という部分を考えていきたいです。リアルスポーツと繋がることもできますし、さまざまなデジタルコンテンツとの融和性が高いと考えています。
福岡にはさまざまな事業を行うスタートアップの企業や大学が多く存在しています。現在、その方々と協力し様々な施策を検討しているところです。
地域とも深く関わりたいと考えておりますので、高校生や大学生の方に「チャレパ」を利用していただき、学生さんたちの表現の場としても活用していただきたいですね。
他にも、eスポーツは誰でも楽しめるという特徴があり、ハンディキャップをお持ちの方やご年配の方でも取組めるものだと考えています。そういった方々とeスポーツを繋げる場としても「チャレパ」を活用していきたいです。
ただ、eスポーツタイトルはプレイの動きが早く、ルールを理解するのが難しい部分があるのも事実です。そのために、今よりも広い層の方に楽しんでもらえるタイトルの導入も検討しています。また、誰でも楽しめるeスポーツのゲームタイトルを作ることができれば面白いなと思っています。
-「esports together!」の5つの取り組みでは、教育と地域貢献が今後の大きな目標になりそうですね。
そうですね。教育面では、どうしても親御さん目線では、子供がずっとゲームをしている姿は良く映りませんよね。そこで、ゲームの中のテクニカルな部分で頭を使うという、勝ち負けと娯楽以上の価値をアピールして、その印象を変えていきたいです。
そのためには、お子さんたちをeスポーツの世界に引っ張り上げるだけでなく、親御さんにeスポーツの価値も発信する必要があります。
ゲームを上手くなりたいと思ったお子さんが増えるのであれば、上達のためのティーチングの需要も生まれると思います。我々の「Sengoku Gaming」と協力しているという強みを活かしたレクチャーイベントなど、「チャレパ」で未来の選手を育てる施策を打っていきたいですね。
-最後に、西田さんが思い描く「チャレパ」の未来をお聞かせください。
我々は「チャレパ」をeスポーツの聖地と呼んでいただけるよう努力したいと考えています。我々だけが人気を集めたいという意味ではなく、日本のeスポーツの施設、携わる方々と共に発信と牽引をする存在になりたいと思っています。その過程で、皆さんに親しんでいただければ幸いです。
そして、将来のプロゲーマーの中に「自分はチャレパ出身の選手です!」と言う人が現れて欲しい。これが今思い描いている未来の景色ですね。
「チャレパ」はカフェやショッピングの利用でも入場可能ですので、福岡・天神に訪れた際にはぜひお気軽にご利用ください。今は外出が難しいご時世ですが、落ち着いたタイミングで足を運んでいただきたいです。