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【これぞ開疎化?】⼤⾃然を舞台美術に変えてしまったステージ「TAOの丘」

九州には、情熱を持つ人たちが沢山いる。そんな情熱に迫るQラボの連載が始まります。第一弾は、和太⿎パフォーマンス集団「DRUM TAO」の社長・藤高郁夫さんです。エンターテイメントは劇場でやるもの。そんな常識を覆し、⼤分県⽵⽥市くじゅう国⽴公園の⼤⾃然が⼀望できる丘に、ステージをつくった藤高さん。その舞台「TAOの丘」で、圧巻のパフォーマンスを⾒せていただいた後、お話を伺いました。(撮影:今林大造・インタビュー:中村圭)


(大自然を背景にした迫力あるTAOのステージ)

中村:素晴らしいライブを⾒せていただき、ありがとうございました。やはり、この⼤⾃然の中の舞台だからこそ⽣まれるエンターテイメントがあるので しょうか?

藤⾼:ありがとうございます。そうですね。エンターテイメントって劇場でやるのが普通じゃないですか。でも、ここ、くじゅうに来たとき、あまりの景⾊の素晴らしさに、この景⾊に勝つ舞台美術はないんじゃないかと思ったんです。⾃然は毎⽇変わる。同じ顔をしてる時は全然ないんですよ。


(芝生が広がる気持ちの良い中庭で藤高社長にお話を伺った)

コロナ禍で⼀気に進んだ⼤⾃然のステージ

藤⾼:実は、ここに舞台をつくる計画は、随分以前からあったんです。でもこの場所が保安林であることなど、いろんな問題がたくさんあって。つくるまでに、時間がかかりすぎてたんです。それが、コロナ渦で⼀気に進みまし た。

私たち、普段は、アメリカツアー班、全国ツアー班、東京の常設班と3班に分かれてるんです。でも、もちろんコロナで公演は全部中⽌になって。いつもは 1年のうち11ヶ⽉は地元を離れて⾶び回ってたんですけど、コロナによって、 3⽉からずっと、ここにいることになった。つまり毎⽇、この環境の中で舞台について発想する時間ができたんです。おかげで思ってた以上の、素晴らしい舞台ができたと思っています。


(この大自然の中にTAOの丘はある)

まさに開疎化でのエンターテイメント

中村:開疎化の時代と⾔われますよね。密なスペースではなく、開かれたスペースで、これからは⾊々なことをやってくべきだという。そんな中、この舞台は時代の⽅向性とも合ってるように感じます。

藤⾼:そうですね。ニューヨークやヨーロッパではアウトエアーが⼀般的です。外での飲⾷は許可しますよ、というような。同じように、このコロナの時代に、外で⾒るってことはひとつ安⼼につながるだろうなと。 実際、皆さん安⼼感があるみたいで、かなり来てくれてます。実は、最初はあんまり来ないと思ってたんです(笑)みんなコロナで怖がってるから。来ないと思ってたんだけど、⼝コミで「ここだったら安⼼だよ」と広げてくれる⼈がたくさんいて。ありがたい話です。

後は、このコロナの中でエンターテイメントを続けられてるのはTAOとしても、⼤きいんです。やっぱり今まで世界中でツアーしていた公演ができないとなると、若い連中も「俺らはどうなっちゃうんだ?どうしたらいい?」と、 いろんな不安やフラストレーションを抱えてしまう。それをこの舞台が、⼀気に解決してくれたんですね。ビックリするほどのコロナ禍の中で、TAOの丘は、未来への⽀えになってくれた。それを今、毎⽇感じています。


(まだ観客が入っていないステージ。後ろには自然がどこまでも続く。)

くじゅうの⼤⾃然は⼈も育ててくれる

中村:ここで集団⽣活もされてるんですよね。環境的にはどうなんでしょう? ⼤⾃然の中だと⼈を育てやすいとかありますか?

藤⾼:それは絶対あると思います。東京で貸しスタジオ借りて、週2〜3回練習をしましょうでは、⼈が育てられないどころか、ショーが作れません。 どんなに太⿎の技術を持った、たとえ⽇本⼀のアマチュアでも、プロとなると全く通じないんです。最低でも育つのに3年5年はかかってしまう。そして、 10年くらいして、ようやく⼀⽪向けて、アーティスティックになり、⾒るものも聞くものも変わっていくという感じなんですね。

中村:なるほど。育つには、集中できる環境が必要なんですね。

藤⾼:ちなみに、ここ⼀番近いコンビニが25キロ離れてるんですよ。

中村:えええーー。そうなんですか。

藤⾼:僕もタバコをやめて6年になるんですけど、昔はタバコが切れる と、25キロ先のコンビニに⾏かなきゃいけないから買いにいかなくなった。 往復50キロですからね。

中村:それは、もう集中できますね。

藤⾼:そうですね。でもね、僕は、ここをただ厳しい環境にはしたくなかったんです。むしろ、リゾートにしようと始めから思ってた。昔は芸能集団というと、ちょっと過疎地の廃校などを利⽤して、厳しい環境で作り上げていくというのが多かった。でも僕は、みんなが⼀緒に⾷事をするところにはバーがあって、サウナがあって、ジムがある。そんなみんなが住みたくなる、友達や家族を呼びたくなるリゾートにしたかったんです。


(確かにリゾートのような環境。京都の氷を使ったレモンソーダをご馳走になった)

ここを拠点でなく、世界の中⼼にする

中村:最後に、九州博報堂は、「地域の情熱たちと、未来をつくる」という⽬標を掲げてるんですが、TAOはこの場所からどんな未来をつくっていきたいと考えていますか?

藤⾼ :くじゅうを世界の中⼼にしたいんです。拠点ではなく、中⼼に。ここに学校をつくる、そして若い連中が、TAOのアーティストになる。または、TAO から学んだ太⿎の技術や⾳楽の技術を世界中に持って帰る。 そして僕らも、世界のツアーをもっともっと広げていって世界中の都市にオフィスをつくる。ファンクラブも世界中に広げる。すでにTAOのファンクラブ は、世界で10万⼈超えてるんですけど、まだまだ広げていきたいんです。

さらにいうと、企業が海外に進出するときの橋渡しにもなれると考えています。例えばTAOがジャカルタで公演するとなったら、⽇本企業の⽅にタイアップしてもらって、企業がジャカルタで進出しやすいようにする。 そういう世界と⽇本の交流の中⼼が、くじゅうになる。世界中の⼈がここに遊びに来るようになる。そして、⼈と⼈のコミュニティが⽣まれる。そういう場所にしていけたらなと思ってます。

コロナ禍の逆境を、くじゅうの⼤⾃然で集中し、新しいエンターテイメントをつくる時間に変えた藤⾼社⻑。くじゅうが世界の中⼼になるまで、TAOのエンターテイメントへの挑戦は、続く。

 

TEXT BY

コピーライター
中村 圭

2007年、博報堂入社。TBWA\HAKUHODO、ID局などを経て、2016年より九州支社、2020年九州博報堂へ。受賞歴は、カンヌ金賞、アドフェストグランプリ、ACCゴールド、福岡広告協会賞ゴールド、鹿児島広告賞グランプリなど。九州の自然を愛し、酒を愛し、熱い人々を愛す。

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