4月9日は「子宮の日」。福岡(天神)駅直結のビルで産婦人科・内科・皮膚科に対応しているゼロマチクリニック。診療にもあたられている古賀先生に、子宮頸がん・低用量ピル・女性のウェルビーイングについてお話を伺いました。
前編では、若年で発症の多い子宮頸がんとその予防について、お話いただきました。
‐「子宮頸がん」、どんな病気なのでしょう?
基本的に、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症します。HPVは200種類以上と多くの種類があり、女性の多くは一生に一度は感染するウイルスと言われています。性交渉経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている、一般的なウイルスなんです。
‐女性の半数が一生に一度感染・・・。不安になりますね。
そうですよね。でもHPVに感染したからといって、すべてがんを発症する訳では ないですよ。中でも、がんを発症しやすい種類のものがあってワクチン接種でそれを防ぐことができます。
‐予防には子宮頸がんワクチンの接種が有効と聞きますが、以前 副反応も話題になった記憶があります・・・。
HPVワクチン接種はコロナワクチン接種と同様、筋肉注射です。
副反応の多くは、接種部位の痛みや腫れなどコロナワクチンのものと似ています。
副反応が大きく報道されたこともあり、厚生労働省がワクチン接種を勧めることを2013年~2021年までの期間、一時ストップしていました。その間、ワクチンを接種した人としていない人での症状の差があるかといった様々な検証がなされました。有名な名古屋スタディもその1つです。
2021年11月 接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められ、2022年4月 厚生労働省から子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が再開されたんです。
同時に、ストップしていた期間に接種できなかった1997年~2006年生まれの女性を対象にキャッチアップ接種も実施されています。
‐キャッチアップ接種、初めて聞きました。子宮頸がんワクチン接種についても教えてください。
まず子宮頸がんワクチン接種について説明しますね。対象は小学校6年~高校1年相当の女の子です。「サーバリックス」・「ガーダシル」2種類のHPVワクチンから選択して無料で接種が受けられます。サーバリックスが2価、ガーダシルが4価ワクチンです。9価ワクチン「シルガード」の無料接種も2023年4月からの開始に向け、準備中と厚生労働省よりリリースされています。
この「価」というのがウイルスの型の意味で、2価は2つ 4価は4つ 9価は9つの型のウイルスを予防することができるということになります。どれも半年の間に3回同じワクチンを接種するというのが一般的ですが、2価・4価ワクチン接種の経験者が、残りの回数9価ワクチンを接種することも可能になります。
キャッチアップ接種は、勧奨をストップしていた時期に対象だった女性が接種を同様に公費で受けられるというものです。対象は、1997年4月2日~2006年4月1日生まれで、過去にHPVワクチン接種を合計3回受けていない女性です。過去に1回受けた方は残り2回、2回受けた方は1回、接種を受けることができます。
‐キャッチアップ接種の場合、25歳の方も接種を受けることになります。年齢が上がっても予防として有効なのでしょうか?
HPVウイルスは性交渉で感染します。一度感染したウイルスの型には、予防接種しても効果はありません。例えば4価のガーダシルを接種したけれども、その内2つの型のウイルスにすでに感染していたとすると、予防の効果は残りの2つの型のウイルスに有効、つまり効果が半減してしまうということなんです。
なので、性交渉を経験する前の早い年齢での接種が有効だと言われています。
国際的に13歳までの接種が推奨されているんですよ。
‐無料ということで敷居は下がると思いますが、多くの女性に接種するには学校での実施が一番だと思いませんか?個々にクリニックで接種を受けるのですか?
そうなんです。現在、学校で集団接種は実施されていないようで・・・。積極的勧奨再開の時、私も学校に無償で出向くのでとご相談したのですが対応が難しいようでした。
未成年の接種となるので、保護者の同意も必要になります。その点もハードルの一つなのかなと感じてはいます。
ワクチン接種の管轄は各自治体となっています。
‐古賀先生のクリニックでもHPVワクチン接種に対応しているのですか?
もちろんしています。接種数は、多い方だと思います。4価で、多くて月50件くらいでしょうか。9価のHPVワクチンは、現在 有償になるんですが、接種希望の方はすごく多いですね。他に対応しているクリニックが少ないんでしょうね。
特に外国人の方が接種に来られます。留学生の方など希望される方が多いです。
‐9価のHPVワクチンもあるんですね。有償とはどれくらいかかるのでしょうか?
3万円くらいです。留学生の周りでは接種することが当たり前なんでしょうね。
世界保健機関(WHO)が接種を推奨しており、2020年11月時点では110カ国で公的な予防接種が行われています。カナダ、イギリス、オーストラリアなどの接種率は約8割。
対して日本の3回接種実施率は、2020年で7.1%です。
接種率の高い国では、発症数が少なく子宮頸がんは希少がんとなりつつあります。
HPVワクチンは、製造が難しくとても高価で貴重なものです。日本は、公費で接種を行っているのでワクチンは十分確保されていますが、中にはワクチン確保が難しい国も。
パッケージなど各国仕様となっているため他国での転用も難しいと聞いています。
税金を使って確保しているものなので、充分に活用できていないのも気になりますね。
2022年4月から厚生労働省の指導の下、各自治体でワクチン接種の取組みが行われていますが、それぞれの自治体の方針で接種率にも差が出ているようです。
20年後くらいにその差が、残念ながら別の形で出てきてしまうのかなと・・・。
グローバルの公衆衛生という観点からも、日本での子宮頸がんワクチン接種がもっと広まっていくよう、まずは正しい情報を知ってもらいたいと思います。
【関連情報リンク】
・定期の予防接種実施者数(令和2年度) 厚生労働省
定期の予防接種実施者数|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
※記事内容は、2023年3月中旬現在のものです。

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