九州で輝く人々と対話することで、九州の女性たちが自分らしく、しなやかに生きていくためのヒントを探ります。九州から女性たちをエンパワメントするQ女LABが研究する「セルフラブ」を軸としたインタビューです。第二回目は、福岡を拠点にご夫婦で音楽活動をされているアーティスト「iima」の永山マキさん。今回はその前半です。
Q女LAB)永山さんは大学生のころから音楽活動をされていて、その中で自分の生き方を選択するタイミングがあったと思います。「音楽を仕事にしよう」と思ったきっかけはありますか?
永山)大学生の頃は音楽を仕事にしようとは全く思っていなくて。ライターやコピーライター、作家などの文章で表現をする仕事をしたいと思っていました。それで文芸学科に通っていたんですが、音楽はずっと趣味としてやっていました。
大学生の頃にバンドを組んで、その時に「メロディーに歌詞をつける」ということが自分の表現方法のひとつとしてすごくしっくりきたんですよね。作詞作曲はバンドを組んでみて初めて「すごく好きだ」と気が付きました。そこから「仕事にしよう」と思ったわけではないんですが、なんだか自然とそうなっていった、という感じです。
曲では、いろんな出会いが教えてくれること、そこから受け取ったものを表現しています。詞は私が書いていますが「書かせてもらっている」「みんなに気づかせてもらっている」という感覚です。
大切にしていることはご縁や感謝の気持ち。
Q女LAB)「表現する」生き方を歩まれている中で、大切にしていることはありますか?
永山)ご縁、感謝の気持ちですね。自分がいま福岡の地にいることも、この「うめや」にいることも全部、ご縁。自分がしてきたことや誰かからもらったこと、それがあって今があるのでそこは大事にしたいと思っています。
子どもの頃は「表現すること」が苦手でした。ものすごく恥ずかしがり屋でしたし、声が低いことがコンプレックスでした。誰ともしゃべらず、ずっと教室の一番後ろでぽつっと静かに過ごしていました。いろいろ空想して過ごすのが好きでしたが、他人からは何を考えているかわからない子に見えたと思います。
その頃のクラスメイトからは「まさか歌を歌うようになるとは」と、びっくりされるでしょうね。親にも言われたことがあります。
Q女LAB)歌うことは自分の殻を破らないとできないことだと思います。しかも自分が書いた詞を自分が歌うことは、自分をさらけ出さないといけないことですよね?
永山)もう、剥き出しです(笑)
Q女LAB)普通にくらしてると簡単にできるようでできない。かつ、剥き出しの自分だけでは生きて行けず鎧をつけていないといけない時もあります。自分とは違うフィールドでこのような生き方をされていて憧れるところがたくさんあるな、と思いながら作品を拝見させていただいています。
永山)ありがとうございます。
たとえマイナスに感じたとしても、そのおかげの「今」は、たくさんある。
Q女LAB)国語の時間で「詩を書く」という授業があり、それがとても苦手でした。心の中を端的に文字にして表すことがすごく難しい作業だなと。感情を表に出すことが恥ずかしかったんです。その時は「殻を破ることがきっと正しいことなんだ」と感じてしまい、それが嫌でした。
永山)ただ言葉に出すだけじゃだめなんです。思ったことを書くことだけでは詩にはならない。それを見た人がどう思うか、どう受け取るかも含めて作品だと思います。
小学生の頃に病気をして入学式に行けなかったんです。しばらくして学校に行ったら、みんな友達ができていた。それが私の中で最初の躓きだったんです。
自分だけ微妙に転校生、みたいな(笑)そのちょっとのズレが小学校6年間に響いた。それでもう喋れなくなっちゃって。というか、どうしていいのかわからなくて。
それからはずっと静かにひとりで過ごすようになりました。でも話したいことはいっぱいあった。だから代わりに物を書くようになったんです。その経験が今の私を作っていると思うんです。
誰とも喋らない分、書いて表現するということの楽しさを見出せた。無理やりやれって誰かに言われたわけでもなく。自分には他に表現方法がないから、ひたすら書いた。今思うとそれがきっかけになったんだろうなと。
密かに好きだった子がいて、その子にクラスの文集か何かにのった自分の文章をすごく褒めてもらったことがありました。それがめちゃくちゃ嬉しかったんです。「こんな自分にもスポットライトがあたる日がきたんだ!」「書くことは本当に楽しい!」って。
口で話す会話は、その場で組み立ててパッと言わないといけない。私はすごくそれが苦手なんですが、文章なら練れますよね。どんな言葉で表現したら受け取り手にはどう伝わるか?とか、説明しすぎないように、余白なども考えつつ組み立てることが楽しくて仕方がなかった。
それは子供のころ喋れない状況になってしまったことが原因かもしれないけれど、たとえマイナスにみえたとしても、そのおかげで今がある、ということはたくさんあるなと思いました。
声で表現することが好き。それに気づけた学生時代。
Q女LAB)学生のころは写真の勉強をされたり専攻以外のこともされていたとのことですが?
永山)学生時代に文芸学科の同期の友人が劇団を立ち上げて、役者として誘われたんです。でもやってみたら難しすぎて。一応演技はできて、割と好きでした。エチュードという即興での練習がほんとうに苦手で・・・「あ、これは向いていない」と思ってやめました(笑)
即興的な演技よりも書かれていることを声で表現するほうが好きだなって、その時に気づかされました。
Q女LAB)LIVEでも朗読コーナーがありますよね。
永山)そうですね。CMなどでもナレーションをさせていただいています。
視点を変えることで気づく日常のすばらしさ。
Q女LAB)昔はコンプレックスだったご自身の声を、今は表現方法とされていますが、その転機となったきっかけは何ですか?
永山)学生時代はカラオケに行っても流行りの曲のキーが高すぎて歌えないわけです。声が低いから男の人の曲ばかり歌っていました。
その一方で、ジャズギターを弾いている父にすすめられてジャズを歌ってみたら、周りから「いいねえ」とほめてもらえたんです。そのうち声の低い女性シンガーの曲も耳にするようになり、「あ、低くてもいいんだ」と次第に自分の声を認められるようになりました。
Q女LAB)憧れのゴールを無理やり目指すというよりも、何かをきっかけで見つけた自分のいいところを素直に受け入れているところが、まさに「セルフラブ」に繋がっていると感じました。自分を出すことが苦手な人は自分の意見が正解なのか間違っているのかが怖くなることが多いのかなと思うのですがいかがでしょうか?
永山)そうですね・・・意見というか、論文を書くような感じでもないんですよね、私が好きな文章って。自分の意見をはっきり言うこともあまり得意じゃないというのもありますが、物事は変わり続けると思うので、限定したくはないなあと。
私の詩や言葉が誰かにとって何かしらのきっかけになったらいいなと思って発しているところはあるかもしれない。いろんな視点から一つのものを見れるような、そんな余白を歌詞の中に残しておきたいと思っています。
Q女LAB)こういう選択肢もあるよ、というのを提示している?
永山)そうですね。視点を変えるだけで日常はもっとすばらしくなると思って書いています。
移住することへの葛藤。
Q女LAB)福岡にくるきっかけのお話を聞かせてください。
永山)娘が生まれて、子育て環境を考えていたときに、東日本大震災が起きたことがきっかけでした。
福島の原発が爆発してすぐ、都内の友人らがどんどん西へ引っ越ししていきましたが、私の母の故郷が福島で、今も祖母らが住んでいることもあり、「東京にいる自分が先に逃げるなんてダメなんじゃないか」と躊躇していました。
すぐに都内でも放射性物質が飛来し、浄水場が汚染されました。各家庭に500mlペットボトル2本しか配給がされなかったり、おむつが品切れしたりして、生後5ヶ月の娘がいるのに、と、かなり焦りました。
そんな不安だらけの時、ちょうど同じ時期に子どもを産んでいた浅羽さんという能古島に住む友人家族が心配してくれて「とりあえずおいで」と電話をくれたんです。
でも東京で生まれ育っているからなのか、みんな忙しいし、人様に迷惑をかけるなんてできない、と思いながらもじもじしていたら、浅羽さんが「明日の15時だったら福岡空港に行ける。明後日だったら13時」と具体的な連絡をくれたんです。「これは本当に来いって言ってくれているんだ」と思いなおしました。
本当は行きたくて仕方がなかった。だけど自分の気持ちを止めるものもあって、「こんなに言ってくれているけどダメダメ!」と思っていました。具体的に示してくれたことで、やっと「行きます!」って飛んだんです。少ないおむつと着替えを詰め込んで、本当に着の身着のままの格好で(笑)
LIVEなどで福岡には来たことがあったけれど、地理や習慣などは浅羽家に居候させてもらいながら、ゆっくりと知っていきました。
浅羽夫妻は商品企画やパッケージデザインの仕事をしていて、九州各地のいろんな生産者さんや企業と繋がっていたので、私たちをたくさんの方に紹介してくれました。
その過程で九州の素晴らしい自然、人々、食、など発見して行くわけですが、ビルやコンクリートばっかりの風景に慣れていた自分は、それをどこかで渇望してたんでしょうね。いっぱいそういうものに触れて「ここに住みたい」と思うようになりました。
でもそんな綺麗事を言っても、ここでの仕事はゼロですから。バンドCM音楽やナレーション、他の仕事も全部東京に置いてきてしまうことになるから、賭けというか、本当にどうなるか分からない。生きるか死ぬか、くらいの気持ちで来ましたね。
2011年をきっかけに福岡へ移住することになった永山さん。決断後もずっと迷い続けていたこと、移住後の暮らしや家族・音楽活動への想い。後半ではそちらに触れていきます。
東京都出身。日大芸術学部に在学中、大人数バンド「モダーン今夜」を結成し5枚のアルバムをリリースする。バンド活動と並行し、ソロアルバム『銀の子馬』リリース、ビートルズカバー集『りんごの子守唄』等コンピレーションCDへの参加、CMナレーション、雑誌コラム執筆など、その活動は多岐にわたる。2011年、福岡に移住後、イシイタカユキ(g)と「日常がちょっと違った景色に見えてくる」ような言葉と音を追求する音楽ユニット、iima(イーマ)を結成し、2018年2月にデビューアルバム『最終回のうた』をリリース。FBSで放送中の人気コーナー『はじめまして赤ちゃん』のテーマソング歌唱、LOVE FMラジオ番組「iimaな時間」担当、JR九州、西鉄、西部ガス、マリンワールド海の中道、など数多くのCM曲を手がけるなど、九州で根を張り精力的に活動中。
2021年8月28日には2ndアルバム『おーいおーい』をリリース。
iima
https://www.iima-music.com/
永山マキinstagram
https://www.instagram.com/nagayamamaki/◉iimaLIVE情報◉
2021年12月18日(日)
今年最後の「iimaな時間vol.11」@sakurako
開場 16:30 開演 17:00
出演 iima (永山マキ&イシイタカユキ)
瓢箪ランプ・スピーカー Kalavinka会場席【SOLDOUT】
配信席受付中(期間内は何度でもご覧いただけます)
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/029mdmt6dr021.htmlーーーーーーーーーーーーーーー
2021年12月22日(水)
me music特別編
『iima X’mas Live & 月下虫音 – あらお わらお うたお』
@マリンワールド海の中道外洋大水槽前
19時〜20時
出演 iima&大田こぞう会場席【SOLDOUT】
※無料配信あり
LIVE配信サイト
https://youtu.be/ZPMr1MTYMSw■ハッシュタグを使った投稿募集中!
「#今年のモヤモヤ今年のうちに」
今年なんだか気になったあんなことやこんなこと、全部忘れてスカッと新年を迎えましょう!
あなたの思いを送ってね! ライブ中や配信映像内で紹介します。みんなで一緒に洗い流しましょう。
投稿は、ハッシュタグ「#今年のモヤモヤ今年のうちに」または、
メール
761@lovefm.co.jp
「月下虫音 今年のモヤモヤ係」まで。
※締め切り:12月20日■ライブ公式サイト
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/839133/
■主催
西日本新聞社・LOVE FM・マリンワールド海の中道ーーーーーーーーーーーーーーー
2021年12月28日(火)
年末に篠栗で会いましょう
iima with 宮川剛& zerokichi LIVE at SASAGURI/TAMAYAiima初の公開LIVEレコーディング!!!
開場 18:00 開演 19:00
出演 iima with 宮川剛/zerokichi
会場 たまや(福岡県粕屋郡篠栗町篠栗987)
料金 要予約3,500円(高校生以下2,500円)※軽食付き
※ライヴ録音があるため乳幼児をお連れでのご参加はご遠慮いただいいております。
ご協力お願い致します。■チケット好評ご予約承り中!
電話 092-947-0245(たまや)
info@yakuin-records.com(薬院レコード)
件名→12/28
本文→お名前・連絡先・人数■交通アクセス
JR「城戸南蔵院前駅」より5分
帰りの電車のご案内
城戸南蔵院前駅21:33→博多駅21:40
城戸南蔵院前駅22:17→博多駅22:44■お車でお越しの方
駐車場あります(25台)
車でお越しのお客様は
予約時にご一報ください。■主催
有限会社たまや各LIVE情報の詳細はこちら
https://www.iima-music.com/live.htm
うめや ごはんとおやつ
オーナーの早川さんがこだわりぬいた野菜などをふんだんに使った「ごはん」
永山さん曰く早川さんは「食べ物と会話をしている」そう。
食材のちからを感じながら、自分の心と会話ができる。そんなお店です。
営業:ごはん11:00〜16:00(15:00 O.S.)
お弁当予約:当日9:00まで 12:00~18:00での引き渡し
おやつはお休みしています。
店休日:水曜日