Qラボ 九州しあわせ共創ラボ

  • ホーム
  • Qインタビュー
  • vol.9 ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役/ 一般社団法人 国際平和映像祭代表理事/ピースデー・ジャパン共同代表 関根 健次さん

vol.9ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役/ 一般社団法人 国際平和映像祭代表理事/ピースデー・ジャパン共同代表
関根 健次さん

【前編】
社会課題の解決・世界平和の実現を人生のミッションに掲げ、ユナイテッドピープルの映画事業や、様々な活動に取り組む関根健次さん。東京から、福岡への移住を経て、その活動をさらに加速化させていく、今の思いについてお話を伺いました。

福岡に拠点を置かれているのは、なぜでしょうか?

これまで東京で仕事をしていたのですけど、東京ではなく海外・アジアを向いて仕事をしたいと思ったので、空港からのアクセスが良く、アジアの玄関口である福岡しかないと思い移住しました。

また、自然がすごく好きで、福岡はすぐ近くに自然が溢れているのもいいですね。

実は今、去年1年間コスタリカに住んでいた時にトレーニングした、スピアフィッシングにハマっていて、先日も長崎に行って石鯛を獲ってきました。
魚以外にも、潮干狩りもしています。そんな、環境の良さもあるので、これからもずっと福岡に住んでいくつもりです。

※スピアフィッシング:素潜りで銛や水中銃を用いて魚類を捕らえる水中スポーツ

ユナイテッドピープルの事業について教えてください。

「人と人をつないで世界の課題解決をする」ということを企業ミッションに、映画という媒体を使って、人と人をつなぐことを事業として行っています。

どうやって、映画を使って人と人をつないでいくのかというと、一般的な映画館の上映のように、ただ映画を見て満足するだけでなく、映画を鑑賞した後に、みんなでディスカッションすることで、人と人をつないでいます。

自分が受けとった映画のメッセージを、みんなにシェアすることによって、多くの人の意見を知ることができるんです。

<映画上映後のディスカッションの様子>

なので、多くの上映会は1回あたり平均して20人から30人の小さな規模で開催されています。小さな規模だからこそ、映画を見て感じた自分のアイデアを披露しやすく、残りの参加者のアイデアも知ることができるんです。インタラクティブな意見の交換を通して、主体的に考えることができますし、同じような意識を持った仲間もできてきます。

こうした映画の上映スタイルを、我々は「市民上映会」と呼んでいます。

この上映スタイルの提案と、社会課題を考えるきっかけとなる題材の映画を提供することで、多くの人と人をつなげ、みんなの力で社会や世界を良くしていこうという事業です。

映画の力を使って、「人と人をつないで世界の課題解決をする」ことを
事業として展開されているのですね。
「市民上映会」はどういった場所で開催されるのでしょうか?

映画を上映できる設備があれば、デパートの屋上や、お寺、ヨガスタジオ、カフェといった、ありとあらゆる場所で上映会は開催することができます。

例えば、徳島県の山奥にある神山町のフレンチレストランで、月一回の上映会が以前開催されていました。その他にも、いろんな場所で、かなり多くの数の上映会が開催されています。

どんな場所でも、「市民上映会」は開くことができるんですね。

弊社では、通常の映画館での公開も行っているので、「市民上映会」用の映画は、通常の公開が終わった後にレンタルをしています。

一般的な映画のレンタルは、一日10万円と高く、会場費がかからなかったとしても100人以上呼ばないと成り立たなかったりするんです。そうすると、やりたいと思ってもなかなか実施することが大変になります。
なので弊社は、レンタル料を下げる取り組みや、定額制の年間ライセンスプランを作るなど、上映会開催のハードルを下げて、10人や20人といった小規模の開催でも、やりやすい環境を提供しています。

そのような取り組みの成果もあって、定期的な上映会を行っている場所は、日本全国100ヶ所以上に広がっています。

音楽がライブだけでなく、ウォークマンや、カラオケといった、楽しみ方が広がったように、「市民上映会」が映画の楽しみ方の一つのスタイル・文化として定着するように、もっともっと上映会を開く機会を増やしていきたいですね。

そうした「市民上映会」を多様な場所で展開することによって、社会をよりよいものにしていきたいと思っています。

映画をきっかけに、人と人をつないで、生まれたアクションなどがあれば
教えてください。

直接的に仕掛けたものですと、東北支援の取り組みの一環として、上映会のなかで寄付金を集めて自然エネルギーの街路灯を11本、気仙沼市に寄付をしました。

その他、ニュースで知ったのですが、弊社の映画を見た高校生が、大学生になって起業した例があります。きっかけは、「ザ・トゥルー・コスト」というファストファッションをテーマにした映画です。彼は『透明なパンツ』の販売で、クラウドファンディングを募り、目標金額の2倍以上を集めて起業したそうです。ちなみに『透明なパンツ』は、スケルトンのいやらしいものではなくて、極限までトレーサビリティを高めたパンツの販売です。
※トレーサビリティ:栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること

また、バングラディッシュを舞台にした映画を配給した際には、それを見た大学生たちが数えきれないくらい、現地にボランティアで飛んで行ったと聞いています。大学生が現地でボランティア活動を行い、戻ってきて報告会をする。すると、その体験を聞いた別の大学生が刺激を受けて、ボランティアに参加する。といった、ポジティブな連鎖を生んでいる例もあります。

こうした事例は、配給数が多く、すべてを知ることはできないですが、とてもいい展開に繋がっていると思います。そして、映画が様々なアクションを生む出発点として機能することを、改めて気づかされますね。

映画というのは、直接的に社会を変えることはできないですが、映画を見て感動した人が、社会を変えるアクションを起こす力があるんです。

ユナイテッドピープルが、配給やレンタルをした映画がきっかけで、様々なところで
社会課題の解決に向けた、アクションが起きているんですね。

もう一つ、「市民上映会」のいいところは、共通の課題意識を持った仲間が増えるところです。出会った仲間たちと、起業したり、NPOを立ち上げたり、ボランティア活動をする。そういった、変化を生み出す活動をみんなで起こしていくことができるんです。

また、上映会がきっかけとなって結婚している人もいます。
個人的に非常にうれしかったのは、オーストリア人の映画監督と日本人が結婚したことです。弊社が配給している映画「0円キッチン」のプロモーションで、上映会を兼ねたクッキングイベントを、福岡で開催したのですが、そのイベントに参加した女性と監督が会場で出会い、結婚しました。

「市民上映会」が結婚のきっかけになっているとは、
「人と人をつなぐ」を分かりやすい形で体現した出来事ですね。
そうした、ポジティブな連鎖を生むきっかけとなる、映画を選ぶ基準は、
何かお持ちであったりするのでしょうか?

まず、前提となるのが、なにかしらの社会課題がテーマになっていることです。

そして、その社会課題の現実の悲惨さを伝えるだけでなく、何かしらの問題解決のアイデアがあるものを、極力選ぶようにしています。

というのも、映画の中で提案しているアイデアを1つの種に、みんなにいろんなアイデアを出してほしいからです。
また、現実をリアルに伝えるだけの映画だと、無力感を強く残してしまい、映画鑑賞後にポジティブなアイデアの意見交換ができなくなってしまうことを避ける狙いもあります。

ただ、現実の悲惨さを伝える映画も意図して選ぶこともあります。

シリアの内戦のドキュメンタリー映画がそうです。その映画は、紛争地帯の実情を伝えているため、実際の戦闘の映像の中に、焦点をあてている人物が撃たれるシーンがある、かなりショッキングな内容の映画です。実情をリアルに伝える映画ゆえに、問題解決のアイデアが無く、あまり見せたくはないのですが、シリアの内戦はずーっと続いていて、世界の関心が徐々に薄れ始めているので、関心を絶やさないためにも、あえて選んだりしています。

なるほど、社会課題や世界情勢に精通した、関根さんだからこそできる映画の選択ですね。ポジティブなアクションの連鎖が、生まれやすい映画に共通点はありますか?

自分自身の生活とか、幸せとか、生きている環境に直接かかわるものは、活動が広がりやすいと思っています。なぜなら、自分が映画を見ることで、自分の身近な接点から、より良い選択ができるような、きっかけを生むからだと思います。

例えば、大学生が起業するきっかけを作った、「ザ・トゥルー・コスト」という映画は、より良い選択をするアイデアを提案する映画なので、高校の家庭科の教科書で副読本に紹介されるまで広がりました。

弊社の映画の中には、中学校や高校の教材になるような、拡がりを持った作品がいくつもあります。

ただ高校や中学での上映会は、大学に比べてまだまだ少ないので、そこはどんどん増やしていかないといけないと思っています。

[企業情報]
ユナイテッドピープル株式会社
代表取締役 関根 健次

住所 福岡市西区今宿駅前1-15-18 3F SALT
設立 2002年7月5日
資本金 1,250万円
事業概要 映画輸入・配給・宣伝・制作事業

PROFILE

ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役/ 一般社団法人 国際平和映像祭代表理事/ピースデー・ジャパン共同代表
関根 健次さん

TEXT BY

Qラボ 研究員
Qラボ 研究員

Qインタビュー

− 九州で、社会の第一線で活躍する人から学ぶしあわせのカタチ −

Qインタビュー

− 九州で、社会の第一線で活躍する人から学ぶしあわせのカタチ −