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vol.3Smart Design Association Co. ,Ltd 代表取締役 / 福岡移住計画主催  
須賀 大介 さん

2012年に東京から福岡に移住。福岡移住計画を主催し、並行してRISE UP KEYA、SALT、HOOD天神、ダイアゴナルランTOKYOなど、福岡を中心に、ローカルコワーキング・オフィスを運営・展開する須賀大介さんに、福岡の生活の魅力について伺いました。

須賀さんは、福岡移住計画を主催されていますが、そもそも須賀さんご自身が福岡に移住したのはなぜですか?

26歳で独立してから、東京でWEBマーケティングの会社をやっていました。その時は毎日深夜2時まで働いていて、当時二歳だった子どものことも顧みない生活でした。ITバブルだったので、その流れにのって40人を雇う会社にまで成長しました。しかし、リーマンショックの時には仕事が激減してしまって、自分がコントロールできない東京の経済動向に依存していることを実感し、「このままだと危ない」と不安を感じました。

その後、東日本大震災をきっかけに、「本当に今の暮らし方が正しいのだろうか?」と考えるようになりました。「もう一度地震が来たら」と考えたら、会社を維持よりも、家族とか仲間とか、自分の周りの人を大事にしようと思うようになりました。

それまでは週末も仕事をしていたのですが、震災以降、週末は家族で出かけるようになりました。週末は東京を離れる二拠点居住といいますか。そうすると、子供の顔つきが東京にいる時と、週末は違っていることに気づきました。

福岡には、週末の家族旅行の一環で、たまたま来たんです。その旅行の途中、天神で糸島在住のクラフト作家の方のイベントがあったんです。その方に糸島の写真を見せてもらったんですが、それがすごく気持ち良さそうで。でも、その時は奥さんとも「すごくいいけど、東京の仕事を考えると、福岡はさすがにムリだよね」という結論でした。

ただ、東京に戻っても糸島が頭に残っていたので、具体的に、現実的に考え始めたんです。福岡は九州経済のリーダーで、起業も盛ん。アジアにも近い。圧倒的にポテンシャルが高いんじゃないか。東京からも飛行機に乗りさえすれば1時間ちょっとで着くし、空港と町も近い。

それで、もう一度、福岡に来ることにしました。そうしたら、福岡の街を歩いている人の表情や雰囲気、エネルギーがとてもしあわせそうに見えたんです。

 

奥さんの反対はなかったのですか?

妻が「のびのびとした環境で子育てをしたい」という考えだったので、うちの場合は、実はわたしよりも、妻の方が移住をリードする感じでした。

福岡に遊びに来た時に、電車の中で子どもが泣き出したことがあったのです。その時、周りにいた福岡のおばさんたちは「子どもは泣くのが仕事やけん」とポジティブな声をかけてくれて。東京だと子育てでいろいろ気を使うことも多かったので、記憶に残っています。

 

今、福岡と東京の仕事の比率はどのような状況ですか?

東京には、毎月定期的に2泊3日で出張しています。あとは必要に応じてですね。今では、売上も福岡の方が大きくなりました。

もともとはWEBマーケティングの会社だったのが、コワーキング・オフィスを手掛けるようになったのは、どんな理由があったのでしょうか?

大学生の時に、ロンドンのクリエイティブ集団であるTOMATOの記事を雑誌で見たことがあったのです。そこではミュージシャン、クリエイター、弁護士など、いろいろな人が自発的に繋がりながら働いていました。

こんな風に、スキルをもったプロが目的のために連携して、プロジェクト型で働くようになるといいな、と思っていました。会社にアソシエーション(※筆者注 共通の目的や関心を持つ人々が、自発的に作る集団や組織)という名前をつけたのも、本来このような働き方をつくりたいと考えていたからです。結局、東京では、10年経ってみると午前2時まで働くような小さいピラミッド型の組織をつくってしまったのですが(笑)。

シェアオフィスを始めたのは偶然の流れでした。東京の下北沢に会社があったのですが、社長の私が福岡に移住するとなった時に、社員の半分が辞めることになったんです。

それで、会社のスペースが半分余ることになったので、ここに私と近い価値観をもった知り合いのクリエイターに入ってもらいました。それが結果として、当社の最初のコワーキング・プロジェクトでもある、下北沢のコワーキング・オフィスになったのです。

 

移住して来て、苦労はなかったですか?

初めの三か月は住環境が劇的に変化することですごくテンションが上がったのですが、それが過ぎると現実に引き戻されました。最初の2年は売上が十分の一になりました。

福岡と東京では仕事の作り方が違います。東京の仕事の実績だけでは、福岡では通用しません。もっと人としての信頼、つながりが大切になります。

それで地域に入り込むために、無料でWEBサイトをつくる、とかいろいろやってみたのですが、それも上手くいかなくて。東京の経験の揺り戻しで、物々交換的な発想で極端になりすぎた所もあり、いろいろと問題も起こりました。

そんな中で直観的に「根ざすための場所」をつくろう、と思って始めたのが『RISE UP KEYA』です。

ただ、これも東京感覚で、事前にコワーキングスペースについて十分な説明をすることなく、スピード優先で進めてしまったので、地元の人たちの理解は得られませんでした。決して上手くいったとは思っていません。

一方で手ごたえもありました。地元の人でも期待してくれる人もいましたし、新しいつながりもできました。東京からも人が来てくれて、面白い場所、コンテンツがあれば人は来てくれるという自信になりました。

だから、その半年後、住んでいた家の隣のビルが空いているのを見て、コワーキング・オフィス『SALT』をオープンしました。

SALT

『RISE UP KEYA』  https://itoshima-lifedesign.com/

『SALT』https://salt.today/

 

西鉄や福岡銀行といった福岡の地元企業とのコラボレーションは、どういった経緯で生まれたのでしょうか?

西鉄さんは、『SALT』や『RISE UP KEYA』という、「新しいコンテンツで、それまで人があまり来なかった場所に、人が来るようになったケース」に興味を感じてくれていました。

西鉄さんは、人口減少により路線の沿線価値が下がっていくことが将来的に予想される中で、街の価値を上げていくためのプロジェクトをいくつも動かしていました。

その中の「遊休不動産の活用」をテーマにしたワークショップに、講師として呼んでいただいたのです。人口減少が進む今、企業が持っている遊休不動産はどんどん増えていて、400兆円ぐらいの市場があると言われています。今後、沿線価値が下がらない様に、西鉄としても、天神に新しいプレイヤーを呼び込む必要性を感じられていたのです。

『HOOD天神』がある物件は、西鉄が持つ20坪程度の遊休不動産でした。半地下の限られたスペースではありますが、新しいプレイヤーを呼び込んでアクションを起こしてもらうためにここを有効活用し、移住者とか、おもしろい人たちを天神に集めようということになりました。プロジェクトにはいろいろと課題もあったのですが、2年かけてなんとかオープンすることができました。

福岡銀行さんからは、『HOOD天神』の事例を見て、声をかけていただきました。

人口減少で、地銀としての投資先も減少しています。福岡銀行さんには、福岡の地元を支える金融機関として、「スタートアップや投資先を育てていくことで、地域経済を活性化する」というミッションがあります。そのミッション実現の一環として、コワーキング・オフィスのプロジェクトもスタートしました。

まず、東京の京橋にある280坪の大きなスペースをシェアオフィスにするということになり、その運営を『HOOD天神』を運営している福岡移住計画に任せていただきました。それが『ダイアゴナルラン TOKYO』です。

『HOOD天神』 https://hood-tenjin.com/

『ダイアゴナルラン TOKYO』https://diagonal-run.jp/

 

『SALT』や『RISE UP KEYA』という須賀さん自身の福岡でのアクションの実績に対する信頼が、HOODにつながり、それが『ダイアゴナルラン』につながったということですね。

移住してきて3年足らずのベンチャー企業を、地元のインフラ企業が信頼して、コラボレーションが実現するなんていうことは、他県では見られない話だと思います。

「福岡をおもしろくしよう」という人であれば、つきあった時間も会社の規模も乗り越えてつながれる、おもしろいことを一緒にやれる、というのは、本当に福岡の良さだと思います。

移住して福岡に暮らす中で、仕事に対する取り組み方は、どのように変わってきたのでしょうか?

福岡に来て、6年の間に地域創生のプロジェクトにも関わることがありました。ビジネスコンサルタントの方や、講師の方が来て成功事例の横展開をしてくださるのですが、期限がきて彼らがその場に来られなくなると、そのプロジェクトが進まなくなってしまうことがよくあります。地元の人はすごく期待するのですが、結局何も起こらない、ということもあったりして。地元の人は期待した分がっかりするんですよね。私も、関わったけれども物理的距離を超えられず、結局地域の方の期待に応えられない状況に、後味が悪い思いをたくさんしました。

私たちも、福岡が長くなってきたので、地元の人たちと気持ちがシンクロして、そんな地元の方の気持ちもわかるようになってきたという感覚があります。

会社としても、新しいこと、おもしろいことだけを追い求めるのではなく、しっかりと地元に定着していこう、というスタンスで仕事をするようになってきました。しかし、根付くだけでは、経済を回すためのマーケットを創り出せないので、発信力は失わない様に、少しずつ粘り強く、根を張ること。これが本当に難しいのですが、私たちの挑戦です。

そして、ヨソモノとしての俯瞰的な視点やアイデアも大事。今、「地元の目線」と「ヨソモノの目線」の中間で、よいバランスにあると感じていて、この感覚を大事にしながら、仕事をしたいと思っています。

『SALT』のあるこの場所にコミュニティをつくろう、と考えているんですけれど、外の人だけでなく、地元の人にも参加してもらって、いっしょにつくっていくような形ができないかな、と思っています。

SALTの前の海   この日は曇っていたが、美しい海が広がっている

 

+Wanderという新しいサービスも開始されていますが、これはどういうものでしょうか?

シェアオフィスの拠点が増えていく中で、今日は打ち合わせがあるから天神で働こうとか、今日は企画書を書くから波の音を聞きながら海辺で働こうとか、私たち自身が場所に捕らわれない働き方をすることで、モチベーションが上がったり、アイデアが出やすくなることを実感していました。

そこで、今後「移動しながら働く」ことが主流になってくると考えるようになり、私たちが持っている拠点が全部使えるようになるサービスとして+Wanderをつくりました。

今、私たちの拠点には会員さんが200名ほどいます。アソシエーションというコンセプトの通り、この200人の会員さんがまるで一つの会社のように働けたらいいなと思います。そのために、シェアオフィスの会員さんたちが、プロジェクト型で仕事ができる環境を目指しています。

今、シンガポールを含めると12拠点あるんですが、新しい拠点をつくったり、既存のシェアオフィスと連携をすることで2020年までに50拠点にするのが数値目標としてあります。

そこで1000人とか2000人の会員になったら、もっとパワフルになる。いろんなスキルを持った人がいろんな土地で働いていて、それが自由に移動することで、その人たちが様々な形で繋がって、新しいアイデアが生まれていくというように。

コミュニティづくりのために、どのようなことをしているのですか?

例えば、『SALT』の中では、会員さん同士が何をしているか、を知る機会をつくるために、Salt Barやランチ会というように、人と人が触れ合う場をリアルな場をつくる活動を、地道にしています。

あと、会員さんの持っているスキル、今働いている場所、こういう人を求めている、というような情報をシェアして、会員さん同士がつながる機会をつくるためのアプリケーションを開発したいと考えています。そうすると会員さん同士のコラボレーションがもっと生まれるのではないかと期待しています。

コワーキング・オフィスは、場所があるだけだと、より利便性の高い場所ができれば人はそちらに移ってしまう。居る場所とコミュニティを一緒につくっていくという帰属感を醸成していくことが大事になります。

We WORKが入ってきたり、利便性の高いコワーキング・オフィスが増える中では、使う人にフィルターをかけて絞り込むようなコンセプト型のコワーキング・オフィスも、そこで働く人の価値観とつなぐという意味で、必要なんじゃないかという気がしています。

例えば、『SALT』はわかりやすい。天神で働けばコトは済む中で、あえて波の音の聞こえる場所に来て、よりよい精神状態の中で、質の高いアウトプットを求める。そういう価値観を持っている人が来ているように感じます。

須賀さんの、これからの目標はなんですか?

50歳になるまでの8年間で、私たちのアソシエーションの中から、30社ほどの小さな独立会社を生み出したい、と考えています。「クリエイター同士がつながる」というところから始まった私たちが、社会的なインパクトを与えるスモールチームをどんどんつくっていけたらいいな、と。

これまでは、先頭を走って馬力で走ってきたのですが、40歳を超えたころから、バトンを20代の人に渡して、応援する立場に変えていきたいと思っています。今の若い人は、僕たちの若いころと比べると本当に進んでいますから。

 

最後に、須賀さんにとって「しあわせ」とはなんですか?

うちの会社では、普段離れている東京のメンバーも集まって、月に一回、合宿をしているんです。そこでは数字の話もするんですが、それ以上に、社会にどんなインパクトをあたえていくか、という話をよくします。先日の合宿ではみんなで、宣言文をつくったんです。

私の宣言文は、「世の中を、本物の人生を送る人で満たす」でした。

私は「自分らしく生きていること」こそが、本当にしあわせなことだと思います。

何か行動を起こそうとした時には、「止めた方がいいよ」、とか外からいろいろ言われることがあります。でも、自分がやりたければ、それを実現するために全力で努力をしてみる。

過去に、やった結果、本当にひどいことになったこともたくさんあるけれど、やりたいことを全力でやってきたことが自信にもなっているし、これから何かをやる時のエネルギーにも、引き出しにもなっている。

シンプルですが、これからも自分らしく、うちの家族らしく生きることを、突き詰めていきたいと思います。

PROFILE

Smart Design Association Co. ,Ltd 代表取締役 / 福岡移住計画主催  
須賀 大介 さん

須賀 大介

WEB系のエンジニアを経て、26歳の2002年に「スマートデザインアソシエーション」を起業。WEBマーケティング、制作・運用を主業とする一方で、地域資源を活用した加工品の販売など地域と都市を結ぶ場づくり事業を東京下北沢でスタート。

2012年、福岡市に移住。「福岡移住計画」を立ち上げる。福岡、東京でシェアオフィスのRISE UP KEYA、SALT、HOOD天神、ダイアゴナルランTOKYOなどを展開。

田中 卓

TEXT BY

Qラボ 研究員/ストラテジックプラニング・ディレクター
田中 卓

大阪出身。二児の父。 1995年博報堂入社。 自動車からキャラクター商品まで、幅広い業種のマーケティング、コミュニケーション、ブランディング、商品開発、事業開発を手掛ける。 2016年には「九州しあわせ共創ラボ」を立ち上げ、九州を盛り上げるためのアクションを企画。 地域から日本を活性化することを目指す。

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− 九州で、社会の第一線で活躍する人から学ぶしあわせのカタチ −

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